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建築事例ブログ

「息子が帰ってくる。でも、部屋がもうない」――庭に建てた10帖の離れと、あえてお風呂を作らなかった理由

こんにちは。八王子・多摩エリアでリノベーションと不動産のお手伝いをしている、MyDesign(株式会社Izumida)の泉田です。

先日、こんなご相談をいただきました。

「息子が実家に帰ってくることになりました。でも、母屋にはもう息子の部屋がないんです」

お子さんが独立したあと、子ども部屋を納戸にしたり、ご夫婦の趣味の部屋にしたり。よくあることです。ところが、就職や転勤、暮らしの変化で「また実家で暮らすことになった」とき、はたと困る。部屋がない。

今回は、この「部屋がない問題」を、母屋をいじらずに解決した事例をご紹介します。答えは、庭に10帖の離れを新築する、でした。

母屋の増築ではなく、なぜ「離れ」なのか

「部屋を増やす」と聞くと、まず母屋の増築を思い浮かべる方が多いと思います。でも、私は今回、増築をおすすめしませんでした。理由は3つあります。

  1. 住みながらの工事は、想像以上にしんどい

増築は母屋の壁を壊してつなげる工事です。工事中は音もホコリも出ますし、生活動線がふさがれる期間も出てきます。ご両親が今まで通り暮らしながら、というのはなかなかの負担です。離れの新築なら、工事は庭の中だけ。母屋の暮らしはそのままです。

  1. 古い母屋に手を入れると、話が大きくなることがある

築年数の経った建物に増築でつなぐ場合、今の建築基準に合わせるために、母屋側にも手直しが必要になるケースがあります。「部屋をひとつ足したいだけ」のつもりが、思わぬ範囲まで工事が広がることがあるのです。離れとして別棟で建てれば、母屋には触りません。

  1. 「ほどよい距離」が家族にちょうどいい

これは設計の話ではなく、暮らしの話です。大人になった息子さんと親御さんが、同じ屋根の下でゼロ距離で暮らすより、庭を挟んで玄関が別にあるくらいの距離感のほうが、お互い気楽に長続きします。

完成した10帖の離れ。母屋(写真左)と色味をそろえたガルバリウムの屋根とグレーの外壁で、あとから建てたのに「最初からここにあった」ようになじんでいます。玄関前にはウッドデッキと、母屋へつながる敷石のアプローチを作りました。

中はワンルーム10帖。ミニキッチンとトイレ付き

離れの中は、勾配天井のワンルーム10帖。ベッドと机を置いても、ゆとりのある広さです。ミニキッチンとトイレを備えているので、朝のコーヒーも、夜中にトイレに行くのも、離れの中で完結します。

キャプション:室内は勾配天井で、数字以上の開放感があります。奥にミニキッチンと冷蔵庫、手前に仕事用のデスク。ひとり暮らしのワンルームとほぼ同じ暮らしができます。

あえて「お風呂」を作らなかった理由

ここがこの計画の、いちばんのポイントです。この離れには、お風呂がありません。お風呂は母屋のものを使う暮らし方です。

「え、不便じゃないの?」と思われるかもしれません。でも、これには2つのちゃんとした理由があります。

理由1. 法律上、お風呂まで付けると「離れ」ではなくなる

あまり知られていませんが、ひとつの敷地には、原則として住宅は1軒しか建てられないというルールがあります。キッチン・トイレ・お風呂の3つがそろった建物は、それだけで独立したもう1軒の家とみなされて、同じ敷地に建てられない場合があるのです(判断は自治体によって異なります)。

今回は、お風呂をあえて母屋と共用にすることで、この建物を母屋の「離れ」として計画しました。逆に言うと、この段取りを知らずに「庭に小さい家を建てたい」と業者に頼むと、あとから役所で止まってしまうことがあります。ここはプロの出番です。

理由2. お風呂を1つにすると、建築費も光熱費も下がる

浴室は、家の中でいちばんお金のかかる部屋のひとつです。防水、給湯器、換気。作らなければ、その分の建築費がまるごと浮きます。さらに、お風呂が1つなら、毎日のお湯はり・掃除・光熱費も1軒分のまま。息子さんが母屋のお風呂を使いに来ることで、自然と家族が顔を合わせる時間が生まれる、というおまけ付きです。

気になる費用は

この離れの工事費は、約1,330万円でした(外構・デッキ含む。敷地条件により変動します)。

「10帖でその金額?」と感じた方、正直ですね。実は、建物は小さくなるほど、面積あたりの単価は高くなります。基礎、屋根、給排水の引き込み、キッチンやトイレの設備。こうした費用は、建物が小さくても大きくてもあまり変わらないからです。

それでも、母屋を大規模に増改築したり、近くにアパートを借り続けたりする場合と、トータルで比べてどうか。ここが判断のしどころです。家賃7万円のアパートなら、15年で約1,260万円。離れは家賃と違って、住み終わったあとも書斎や趣味室、将来の親の居場所として敷地に残ります。

「うちの庭にも建てられる?」と思ったら

同じような「空いている庭」は、八王子・多摩エリアの戸建てにたくさん眠っています。ただし、建ぺい率や容積率の余りがあるか、先ほどの「離れ」の条件を満たせるか、給排水をどこから引くかは、敷地ごとに全部違います。

MyDesignでは、リノベーションだけでなく、こうした敷地の使い方のご相談も受けています。90分の無料相談会を行っていますので、「うちの場合はどうだろう?」という段階で、お気軽にお声がけください。図面がなくても、お庭の写真だけでも、お話しできることはたくさんあります。

(株式会社Izumida/MyDesign 泉田)