この記事の結論
45分準耐火で「1820芯+105柱+165サッシW1690」は、寸法だけを見れば納まります。
しかし本当の論点は、サッシ開口部に面する柱小口の防火処理をどう考えるかです。
PB15mmを介在させる納まりは安全側の一例ですが、それだけが唯一の方法と断定できる明文は、今回の調査では確認できませんでした。
30mm以上の木材等によって開口小口を処理する考え方も技術資料にあります。
一方で、何の防火処理もせず木柱へアルミサッシを直接取り付ける納まりについても、無条件に法適合と断定できる決定的な根拠は確認できませんでした。
つまり、「PB15を入れるかどうか」ではなく、「開口端部の防火性能をどの納まりで確保するか」が本質です。
※本記事は2026年9月時点で確認できた法令・技術資料と、実際の設計・確認申請業務での検討経験をもとにまとめています。個別物件の法適合を保証するものではありません。
採用する告示仕様・大臣認定・製品・建物条件によって判断が異なるため、最終的には確認検査機関・特定行政庁・メーカー等へ確認してください。
45分準耐火で「1820芯に165サッシ」は本当に入らないのか?
木造住宅の設計をしていて、今回こんな問題にぶつかりました。
「柱芯々1820mmのところに、呼称165のサッシを入れたい。」
柱を105mm角とすると、
1820-105=1715mm
が柱の内々寸法です。
一般的な規格寸法では、呼称165のサッシWは1690mmです。
したがって、
1715-1690=25mm
です。
単純な寸法だけで見れば、柱内々に対して左右合計25mm、中央配置なら片側約12.5mmの余裕があります。

1820芯+105柱+165サッシの基本寸法図
ところが、45分準耐火建築物では話が少し複雑になります。
ある住宅会社の設計担当者から、
「準耐火45分の場合は、サッシ脇の柱にもPB15mmの防火被覆を設けるため、165サッシは1820芯には納まらない」
という指摘を受けました。
その考え方なら、
1690+15+15+105=1825mm
となり、1820mmに対して5mm不足します。
施工クリアランスまで考えれば、さらに必要寸法は大きくなります。
では、本当に
「45分準耐火ならサッシ脇柱には必ずPB15mmを入れなければならない」
のでしょうか。
ここから、告示・標準納まり・メーカー資料・防耐火設計資料までかなり深く調べることになりました。
出発点は「平成12年建設省告示第1358号」
準耐火構造の代表的な告示が、
平成12年建設省告示第1358号
「準耐火構造の構造方法を定める件」
です。
【URL】
https://hourei.ndl.go.jp/simple/detail?lawId=0000087026
この告示は現在も有効で、壁・柱などの準耐火構造の構造方法が規定されています。
柱についても、準耐火性能を確保する構造方法の一つとして、厚さ15mm以上のせっこうボード等による防火被覆が規定されています。
【URL】
https://www.mlit.go.jp/common/001418291.pdf
ここだけを見ると、
「それなら柱は全部PB15で巻かなければいけないのでは?」
と思います。
しかし、大壁構造の中にある柱は、それほど単純に「柱単体の4面をすべてPBで巻く」と整理されているわけではありません。
大壁内部の柱は、壁の防火被覆と一体で考えられている
公益財団法人日本住宅・木材技術センターが公開している、
「木造住宅用の防耐火構造標準納まり図」
は、告示仕様をもとにした標準的な防耐火納まりを確認するうえで非常に参考になります。
【URL】
https://www.howtec.or.jp/files/libs/1625/20171023105146100.pdf
この資料を見ると、大壁構造では、柱が壁体内に納まり、屋外側・屋内側の防火被覆と一体として保護される考え方が示されています。
つまり、
「構造柱だから、柱の4面すべてにPB15mmを個別施工する」
という単純な整理ではありません。
問題になるのは、窓などの開口部です。
本当の争点は「サッシに面する柱小口をどう処理するか」
壁の中にある柱であれば、壁材に囲まれています。
しかし窓を設けると、柱の一面が開口側になり、その部分にサッシが取り付きます。
今回の争点はまさに、
「このサッシに面する柱側面・開口小口を、どのように防火処理するか」
でした。
調査していくと、大きく3つの考え方に整理できます。


A・B・Cの3案比較図
A案:木柱へアルミサッシを直接取り付ける
PB15mmや30mm木材を介在させず、柱へサッシを直接取り付ける考え方です。
今回調べた範囲では、
「この納まりは法令上明確に禁止されている」
と一義的に断定できる決定的な資料は確認できませんでした。
一方で、
「何の防火処理もせず木柱へアルミサッシを直接取り付ければ、無条件に法適合である」
と断定できる決定的な資料も確認できませんでした。
そのため、この記事ではグレー、要個別確認と整理します。
寸法上は、1820芯+105柱+W1690なら納まります。
しかし、防耐火上の適合性は寸法とは別問題です。
B案:柱とサッシの間にPB15mmを介在させる
柱面へPB15mmを施工し、その上でサッシを納める方法です。
これは告示1358号にある柱の防火被覆仕様を、安全側に適用した納まりとして理解できます。
ただし、今回確認した告示本文には、
「サッシ脇の柱面には必ずPB15mmを施工すること」
「柱とサッシ枠の間へ必ず15mmのせっこうボードを介在させること」
「開口寸法を左右15mmずつ控えること」
という具体的なサッシ納まりまでは記載されていませんでした。
つまり、PB15mmは安全側で分かりやすい方法ですが、「これだけが唯一の法定納まり」とまでは今回確認できなかった、というのが私の整理です。
今回やり取りした住宅会社では、このグレー部分について安全側の判断を採り、PB15mmを基本とする独自の設計ルールを以前から設けていました。
企業として安全側に統一する考え方自体は合理的だと思います。
ただし、その会社の統一基準と、全国共通の法令上の唯一解とは分けて考える必要があります。
C案:30mm以上の木材等で開口小口を処理する
今回、PB15mm以外の方法を調べる中で重要だったのが、開口小口へ断面の大きな木材等を設け、ファイヤーストップとして処理する考え方です。
日本建築センターの「木造建築物の防・耐火設計マニュアル」など、防耐火設計の技術資料では、開口部小口までボード等を回すことが難しい場合に、30mm以上の木材等で処理する考え方が示されています。
【URL】
https://www.bcj.or.jp/publication/detail/4/
【URL】
https://www.kenchikushikai.or.jp/data/koshukai/seminar_text1-2.pdf
この考え方を見ると、
「PB15mmだけが唯一の防火処理方法ではない」
ことが分かります。
ただし、寸法上の問題があります。
1820芯・105柱・165サッシW1690に、左右30mmずつの木材を入れると、
1690+30+30+105=1855mm
です。
施工クリアランス10mmまで考えるなら、
1865mm
必要になります。
したがって、C案で165サッシを使う場合、1820芯のままでは納まりません。
柱芯を広げるか、サッシを160等へ小さくする必要があります。
160サッシW1640なら、
1820-105-30-30-10=1645mm
となるため、施工余裕10mmを見ても寸法上は納めやすくなります。
1820芯・1365芯・910芯と規格サッシの関係
規格寸法を見ると、非常に興味深いことがあります。
910芯・105柱の場合
柱内々805mm
074サッシW780mm
差25mm
1365芯・105柱の場合
柱内々1260mm
119サッシW1235mm
差25mm
1820芯・105柱の場合
柱内々1715mm
165サッシW1690mm
差25mm
【URL】
https://www.lixil.co.jp/lineup/window/samos-hl-fghl/variation/glass-hl/pdf/wide.pdf
【URL】
https://webcatalog.ykkap.co.jp/
これは非常に興味深い寸法体系ですが、
「25mm余るように作られている=準耐火でも直付けで法適合」
という証明にはなりません。
寸法設計と防耐火上の適合性は別問題だからです。

910・1365・1820と074・119・165の寸法比較
吉野石膏の記事「準耐火までならスタッドと枠を直接止める」の意味
今回かなり参考になった資料が、一般社団法人日本建築材料協会の機関誌、
「けんざい263号」
です。
吉野石膏の技術者による木造防耐火の解説の中で、木造耐火と準耐火の開口部の違いについて説明されています。
その中には、
「準耐火までならスタッドと枠を直接止めることができます」
という趣旨の説明があります。
【URL】
https://www.kenzai.or.jp/past/kikanshi/pdf/263.pdf
この文章だけを見ると、
「それなら木柱へアルミサッシを直接付けてもよいのでは?」
とも読めます。
私も最初はそう考えました。
しかし、この一文だけでは、「枠」が具体的にアルミサッシ枠そのものを意味するのか、木枠等を介した納まりを含むのかまでは明確ではありません。
したがって現在は、
「準耐火では、耐火構造のような完全な連続被覆だけが唯一の方法ではないことを示す参考資料」
と捉えるのが適切だと考えています。
裸の木柱+アルミサッシ直付けを無条件に認める決定打として使うのは、少し強すぎます。
耐火と準耐火は同じ納まりではない
今回の調査で改めて重要だと感じたのが、耐火構造と準耐火構造を混同しないことです。
木造耐火では、木材を火災時に炭化させないよう、柱・梁等を耐火被覆で連続して保護する考え方が基本になります。
吉野石膏の技術解説でも、耐火構造では開口部周囲まで木材が露出しないよう耐火被覆を連続させる考え方が説明されています。
そのため、耐火では開口部周囲の木材も採用認定に従って耐火被覆する必要があると考えるべきです。
ただし、「耐火なら必ずPB15mm」という意味ではありません。
耐火構造は、採用する大臣認定によって被覆材の種類・厚さ・枚数等が決まります。
つまり、
耐火:
採用認定どおりに木材を連続被覆することが重要
準耐火:
必要性能を満たしつつ、開口端部の処理について複数の技術的選択肢があり得る
という違いです。

耐火と45分準耐火の開口部の考え方比較
行政の建築指導窓口にも相談しました
今回、当社スタッフがある自治体の建築指導担当窓口へ相談しました。
担当者の方にも関連する告示や古い技術資料まで確認していただき、約2時間にわたり検討していただきました。
しかし、その場では、
「何らかの防火上の配慮は必要だと考えられるが、今回のようなサッシ開口部について“この納まりでなければならない”と一義的に示す明確な根拠までは確認できない」
という整理となり、明確な白黒は出ませんでした。
担当者の方からは、冗談交じりに、
「この辺りはブラックボックスのようなところですね」
という趣旨の言葉もありました。
もちろん、これは自治体としての公式見解ではなく、個別相談時のやり取りです。
また、「行政なら必ず答えが分かる」「確認検査機関なら誰でも即答できる」という意味でもありません。
むしろ今回実感したのは、実務者が複数の資料を確認しても、細部納まりについて簡単に一つの答えが出ないテーマが存在するということでした。
だからこそ、
「告示に書いていないからOK」
でも、
「告示に柱の被覆と書いてあるから必ずPB15」
でもなく、
具体的な開口詳細を描き、採用仕様と照らして個別確認する
ことが重要だと思います。
ある住宅会社は「安全側の社内ルール」を採用していた
今回やり取りした住宅会社では、この曖昧な部分について、安全側に統一した社内設計ルールを以前から設けていました。
具体的には、PB15mmをサッシ脇柱に介在させることを基本とし、
・165 → 160等へ変更
・119 → 114へ変更
・074 → 069または060へ変更
など、規格サッシを一つ小さくする運用です。
この判断自体は、企業としてコンプライアンスや施工品質を重視するうえで合理的だと思います。
ただし、重要なのは、
「ある会社が安全側として採用した基準」
と、
「全国一律で法令上それ以外は認められない」
という話は同じではない、ということです。
実際、この会社自身も、開口側の柱被覆について法令・大臣認定だけでは解釈が明確でない部分があるため、安全側へ統一するという経緯でルールを作っていました。
実務では、施工会社・住宅会社独自の標準納まりが存在することがあります。
そのため、確認申請を担当する側としては、申請前に施工会社の標準納まり・設計基準を確認しておくことが非常に重要だと感じました。
実務で同じ問題にぶつかったらどうするか
私なら、今後は次の順番で確認します。
- 採用する45分準耐火仕様が告示仕様なのか、大臣認定仕様なのか確認する
- 外壁とサッシ開口部の標準納まりを確認する
- 開口小口の防火処理をPB、木材等のどの方法で行うか決める
- 施工会社・住宅会社独自の標準設計ルールがないか確認する
- 判断が割れる場合は、平面詳細・横断面を作成して確認検査機関または行政へ事前相談する
ポイントは、確認申請後ではなく、確認申請前にここまで確認しておくことです。
よくある質問
Q. 45分準耐火なら1820芯に165サッシは入らないのでしょうか?
寸法だけなら入ります。105柱の場合、柱内々1715mmに対して165サッシW1690なので、左右合計25mmの差があります。ただし、PB15mmや30mm木材等を開口小口へ入れる納まりを採用すると、1820芯では165が納まらなくなる場合があります。
Q. サッシ脇の柱にはPB15mmが必須ですか?
柱の準耐火構造としてPB15mm等の防火被覆は告示に規定されていますが、「サッシ脇の柱面には必ずPB15mmを介在させる」という具体的なサッシ納まりまで告示本文に明記されていることは、今回の調査では確認できませんでした。採用仕様・認定・標準納まりを確認する必要があります。
Q. PB15mm以外の方法はありますか?
技術資料では、開口小口まで防火被覆を回す方法のほか、30mm以上の木材等でファイヤーストップを設ける考え方が示されています。ただし、採用する構造・認定条件への適合確認が必要です。
Q. 木柱にアルミサッシを直接取り付けてもよいですか?
今回の調査では、「絶対に不可」と断定する決定的な資料も、「無条件に適法」と断定する決定的な資料も確認できませんでした。グレーな部分として、個別確認するのが安全だと考えています。
Q. 木造耐火でも同じ考え方ですか?
同じではありません。木造耐火では、採用する耐火認定に従い、木材を耐火被覆で連続して保護することが重要です。開口部周囲も認定仕様に従って処理する必要があります。
まとめ
今回の問題は、
「165サッシが物理的に入るか」
というだけの寸法問題ではありませんでした。
本当の論点は、
「45分準耐火のサッシ開口部で、柱小口の防火性能をどの納まりで確保するのか」
です。
今回の調査で私がたどり着いた整理は次のとおりです。
・1820芯+105柱+165サッシW1690は、寸法だけなら入る
・準耐火では、開口端部の防火処理を無視することはできない
・PB15mmは安全側の有力な方法だが、唯一の方法とまでは確認できない
・30mm以上の木材等による開口小口処理という考え方もある
・何も処理しない木柱+アルミサッシ直付けは、今回の調査では白黒を断定できない
・採用仕様・大臣認定・メーカー仕様・施工会社基準・確認機関の判断を総合して決める必要がある
結論として、
「PB15を入れるか、入れないか」だけで考えるのではなく、開口端部の防火処理をどう設計するかまで含めて判断する。
これが一番大切だと思います。
同じ問題にぶつかった設計者、建築士、工務店、施工会社の方の判断材料になれば幸いです。
この記事を書いたMyDesignについて
MyDesignは、東京都八王子市を拠点に、戸建て・マンションのリノベーションを中心に行っています。
また、設計事務所を併設しており、リノベーションだけでなく、木造住宅の新築設計、建築確認申請、法規検討、既存住宅の設計・改修にも携わっています。
今回の記事も、実際の新築住宅の確認申請と施工納まりを検討する中で生じた疑問をきっかけに、告示、標準納まり、メーカー資料、防耐火設計資料、行政相談まで確認してまとめました。
建築実務では、条文だけでは判断しにくい納まりに出会うことがあります。
そういうときこそ、
分からないことを曖昧なまま施工せず、資料を調べ、図面に落とし込み、必要に応じて行政・確認検査機関・メーカー・施工者と協議する。
それが設計を行う側の大切な仕事だと考えています。
この記事が、全国で同じ疑問に直面した方の一助になれば嬉しく思います。
参考資料
平成12年建設省告示第1358号「準耐火構造の構造方法を定める件」
https://hourei.ndl.go.jp/simple/detail?lawId=0000087026
国土交通省「準耐火構造の告示仕様資料」
https://www.mlit.go.jp/common/001418291.pdf
公益財団法人日本住宅・木材技術センター「木造住宅用の防耐火構造標準納まり図」
https://www.howtec.or.jp/files/libs/1625/20171023105146100.pdf
一般社団法人日本建築材料協会「けんざい263号」
https://www.kenzai.or.jp/past/kikanshi/pdf/263.pdf
一般財団法人日本建築センター「木造建築物の防・耐火設計マニュアル」
https://www.bcj.or.jp/publication/detail/4/
開口部の防火処理に関する講習資料
https://www.kenchikushikai.or.jp/data/koshukai/seminar_text1-2.pdf
LIXIL サッシ規格寸法資料
https://www.lixil.co.jp/lineup/window/samos-hl-fghl/variation/glass-hl/pdf/wide.pdf
YKK AP WEBカタログ
https://webcatalog.ykkap.co.jp/
