不動産の売却話 「ありがとう」
息子は、私にとって宝物だ。遅く結婚した私にとって、40過ぎにできた初めての子供は読んで字のごとく目の中に入れてもいたくないくらいのかわいさだった。言葉を話せるようになり、歩けるようになり、感情を表すようになり、私は日々、 […]
息子は、私にとって宝物だ。遅く結婚した私にとって、40過ぎにできた初めての子供は読んで字のごとく目の中に入れてもいたくないくらいのかわいさだった。言葉を話せるようになり、歩けるようになり、感情を表すようになり、私は日々、 […]
「さよなら」それが妻の言った最後の言葉。まあ、正確には元妻、なんだけど。中学に上がる娘と、俺を残して、他の男を作って去っていった。夫婦仲がうまくいっていなかったのかと言われれば、ぶっちゃけ俺はそんなことはないと思っている […]
ひゅうう、と冷たい風の吹く冬の日。今日は今年一番の寒さだと言われている。「寒いですねえ」「そうだな。今年一番の寒さだってよ」「そうなんですか」「そうなんですかって、先輩に対してお前ねえ」「すいません」会社の先輩は、全くと […]
毎年夏になると、俺の家族はみんなで、避暑地であるN県のペンションに泊まりに行く。それはいつからかのことだったのかはもうよく覚えていないけれど、小さいころからの慣習だったような気がする。小学校から、中学校まで。高校になって […]
私の夫は、全国に支社のある企業に勤めている。だから、夫の転属が決まったことは、それほど驚くことではなかった。別に海外に転勤というわけでもないし、夫は単身赴任を前にもしていたことがあったし、またそんなことだろう。単身赴任に […]
私にとっての運命の日は、テレビから、午後のドラマを遮って始まった気象情報がひっきりなしに流れていた日でした。ざああ、と、雨の音が窓ガラスを叩いていました。『今回のゲリラ豪雨は数十年に一度の規模です。避難警告の出ている地域 […]
それは、酷い雨の日だった。 父が死んだ。 俺たちは三人兄弟で、俺が長男。弟と、妹。 父の死はとても突然だった。車の事故。暗い夜、仕事の帰り、雨で前が見えない中で、父が歩いていた歩道に右折車が突っ込んできたのだ。ほとんど即 […]
25年前、僕は生まれた。生まれた時には父はいなかった。母が僕を身ごもったと知って、父は逃げてしまったそうだ。だから、顔は知らない。それに、別に会いたいと思ったことも一度もなかった。僕は、駅からは遠く、それほどいい家ではな […]
これは、不動産業界に勤める友人から聞いた話だ。彼は私の高校時代からの友人で、高卒で不動産営業になった。確か、営業になって3年目、70代男性が一人で暮らしていた、都内の古い一戸建てを売却したという。奥さんは2年前に他界して […]
「そろそろうちも手狭になってきたし、売ることにしない?」妻がそう言いだしたのは、2人目の子供を授かった直後のことだった。今住んでいる家は1dk、確かに手狭だ。子供がまだ小さいので、僕たち自身に金をかけることが出来ず、夫婦 […]